連作短編アニメーション 秒速5センチメートル

新海誠監督 本作に寄せて

「秒速5センチメートル」は、ひとりの少年を軸にして描かれる、独立した3本の作品からなる連作短編アニメーションです。
時代は1990年代前半から現代までの日本。場所は少年の人生に沿って東京や地方のいくつかを変遷します。

この作品には、他の多くのアニメーション作品に見られるようなSFやファンタジーなどの架空の要素は登場しません。そのかわり徹底したロケハンを行い、今この現実をアニメーション表現の中にすくい取ろうと試みています。

我々の日常には波瀾(はらん)に満ちたドラマも劇的な変節も突然の天啓もほとんどありませんが、それでも結局のところ、世界は生き続けるに足る滋味や美しさをそこここに湛(たた)えています。

現実のそういう側面をフィルムの中に切り取り、観終わった後に、見慣れた風景がいつもより輝いて見えるような、そんな日常によりそった作品を目指しています。


秒速5センチメートル

新海誠 プロフィール

1973年、長野県生まれ。2002年、個人で作り上げた短編作品「ほしのこえ」で鮮烈なデビューを飾る。同作品は、新世紀東京国際アニメフェア21「公募部門優秀賞」をはじめ多数の賞を受賞、人気に火がつく。2004年公開の初の長編映画『雲のむこう、約束の場所』では、その年の名だたる大作をおさえ、第五九回毎日映画コンクール「アニメーション映画賞」を受賞。2007年公開の連作短編アニメーション『秒速5センチメートル』で、アジアパシフィック映画祭「最優秀アニメ賞」、イタリアのフューチャーフィルム映画祭で「ランチア・プラチナグランプリ」も受賞している。2011年に全国公開された『星を追う子ども』では、これまでとは違う新たな作品世界を展開、第八回中国国際動漫節「金猴賞」優秀賞受賞。2012年、内閣官房国家戦略室より「世界で活躍し『日本』を発信する日本人」として感謝状を受賞。次世代の監督として、国内外で高い評価と支持を受けている。

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